岡山県貨物運送事件(仙台高判平26・6・27) 新卒が過労自殺、上司に注意義務違反なしの一審は 業務量調整する措置怠った
新卒社員が長時間労働などで適応障害を発症し自殺した事案。遺族が所長らに損害賠償を求めた。一審は、所長が営業所の増員を要請しており心身の健康に関する注意義務違反はないとしたが、仙台高裁は、誤った出退時刻の申告を放置し残業を違法に端数処理するなど正確に時間管理をせず、業務量調整の措置を怠ったと認定。厳しい叱責で過度の心理的負担も生じたとした。
誤った時間管理で 厳しい叱責も一因
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、一審被告会社の宇都宮営業所に勤務していた一審原告らの長男Dが、連日の長時間労働のほか、上司であった一審被告Yからの暴行や執拗な叱責、暴言などのいわゆるパワハラにより精神障害を発症し、自殺するに至ったと主張して、遺族である原告らが、会社に対しては、不法行為または安全配慮義務違反に基づき、Yに対しては、不法行為に基づき、各損害金および遅延損害金の連帯支払いを求めた事案である。
原審は、原告らの会社に対する民法709条(不法行為による損害賠償)に基づく請求を一部認容し、会社に対するその余の請求およびYに対する請求をいずれも棄却した。これに対し、原告らは、Yに対する請求が棄却されたことを不服として控訴し、会社は、請求が一部認容されたことを不服として控訴した。
判決のポイント
亡Dは、新入社員として緊張や不安を抱える中で、本件自殺の5か月前(入社約1か月後)から月100時間程度かそれを超える恒常的な長時間にわたる時間外労働を余儀なくされ、本件自殺の3か月前には、時間外労働時間は月129時間50分にも及んでいたのであり、その業務の内容も、…
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