サン・チャレンジほか事件(東京地判平26・11・4) 上司のいじめや暴行で自殺、代表取締役の責任は? パワハラ対策怠り賠償認容
飲食店長が自殺したのは長時間労働や上司のいじめ・暴行が原因として、遺族が上司や代表取締役らに損害賠償を求めた。東京地裁は自殺との相当因果関係を認めたうえで、取締役には会社が安全配慮義務を遵守する体制を整えるべき注意義務があるが、長時間労働などを放置し、パワハラの指導や研修の対策も採らなかったとして、会社法に基づく損害賠償責任を認容した。
指導や研修をせず 会社法上の過失に
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
亡Aの両親は、亡Aが、Y1会社の経営する飲食店で店長として勤務していたところ、長時間労働および上司であったエリアマネージャーのY2からのいじめ・暴行等のパワハラにより急性の鬱病を発症して自殺したと主張して、Y1会社や上司のY2、代表取締役であるY3に対して、それぞれ損害賠償の支払いを求めて提訴した。
なお、訴訟に先立ち、労災申請がなされており、労基署長は、本件自殺を業務上のものと認定した。
本件判決では、まずY2は不法行為責任を負うとしたうえで、使用者であるY1会社の債務不履行(安全配慮義務違反)を認め、さらに使用者責任も成立するとした。
本稿では、主にY3の会社法429条1項による損害賠償請求責任の有無について、取り上げることとする。
判決のポイント
1 長時間労働およびパワハラと自殺
亡Aは、当該店舗で勤務し始めた頃から、自殺するまで、数年間、恒常的に一日当たり12時間30分以上の長時間労働をし、休日もほとんどない状態であった。…
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