社会福祉法人県民厚生会ほか事件(静岡地判平26・7・9) 適応障害でセンター長解任、休職満了後は退職扱い 業務上疾病により解雇制限
上司のパワーハラスメントで適応障害を発症し、休職中に解雇されたのは不当として介護施設のセンター長が地位確認などを求めた。静岡地裁はパワハラは認めなかったが、業務の強度な精神的負担から適応障害を発症したと認定。労基法19条の解雇制限に照らし休職中の退職処分を無効として、賃金請求権を認めた。センター長からの降格は、人事権の裁量範囲で有効としている。
法19条違反で無効 賃金請求権を認容
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被告社会福祉法人県民厚生会の職員であった原告Xが、被告に対し、施設長から介護主任への降格処分の無効および業務上の疾病による休業中になされた休職期間満了による退職処分の無効を主張した事案である。
Xは、①被告に対し、(1)雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、(2)施設長であることの確認、(3)休職期間中および退職処分後の未払賃金(ただし、労災補償保険法に基づく休業補償給付金の支給分を控除した分)の支払いを求めるとともに、②当時、被告の理事長であった被告Cおよび常務理事であった被告Dに対し、被告Cおよび被告Dから恒常的にパワーハラスメントを受けて適応障害になったとして、不法行為に基づく慰謝料500万円の連帯支払いを求めた。
判決のポイント
1、Xが診断を受けた適応障害は、センター長としての業務に内在する危険が現実化したものであると認めるのが相当である。Xの当該業務と適応障害の発病との間には相当因果関係があるということができるから、Xの適応障害は業務上の疾病であると認められる。本件退職処分は、Xが業務上「疾病にかかり療養のために休業する期間」にされたものと認められるから、労基法19条1項本文に反して無効というべきである(退職扱いは無効として地位確認を認容)。…
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