日本政策金融公庫事件(大阪高判平26・7・17) 100時間残業でうつ病自殺、約9000万円の賠償は? 早出に業務上の必要性なし
月約100時間の残業でうつ病を発症し自殺したとして、配偶者らに約9000万円の賠償を命じた一審に対し、原告・被告が控訴した。大阪高裁は、早出は朝食や朝刊を読むためで業務上の必要性はないと判断。終業後の残業は約70時間で2カ月以上継続したことはなく、過重な業務ともいえないとして一審を覆して請求を斥けた。私生活での心理的負荷が原因とした。
朝食や新聞閲覧で 私生活に原因あり
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
公庫(農林漁業金融公庫。後に、株式会社日本政策金融公庫が権利義務を承継)の職員(平成2年4月入社)であった甲(昭和41年生)は、A支社に勤務していた平成17年7月7日午後3時頃、うつ病の発症によって生じる希死念慮により自殺した。
労基署長は、平成19年12月20日付で甲の自殺を業務上災害と認め、遺族補償年金および葬祭料の支給を決定した。これを受けて甲の遺族が、公庫に対して、公庫の安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求めて訴えを提起した。
本件の争点は、①業務とうつ病の発症との相当因果関係、②公庫の安全配慮義務違反または注意義務違反、③過失相殺、④損害額である。本件は二審判決であるが、一審(大阪地判平25・3・6)では、甲の遺族の請求の一部を認めて約9000万円の支払いを命じたが、本件では、業務とうつ病の発症との相当因果関係の存在は認められず、一審判決で容認した部分を取り消し、遺族の請求を棄却した。
判決のポイント
労働者が傷病等を負った場合に、それが業務に起因した傷病等であると評価するには、単に当該業務と傷病との間に条件関係が存在するのみならず、社会通念上、業務に内在しまたは通常随伴する危険の現実化として傷病等が発症したと法的に評価されること、すなわち業務と労働者の傷病等との間に相当因果関係の存在が必要である。…
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