サントリーホールディングスほか事件(東京地判平26・7・31) 上司の叱責でうつ病に、休職認められず年休消化? 心身への配慮欠き不法行為
上司のパワハラでうつ病と診断され休職せざるを得なくなったとして損害賠償を求めた。東京地裁は、「新入社員以下」、「馬鹿」などの発言は指導として許される限度を超えていると判断。上司が診断書をみたにもかかわらず、一時休職を認めず年休を消化するよう告げたことは心身への配慮を欠き不法行為に当たるとした。事業の執行に伴うもので使用者責任が成立するとした。
指導の範囲も逸脱 使用者責任が成立
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、上司の被告丙からパワハラを受けたことにより鬱病の診断を受けて休職を余儀なくされ、また、被告会社の内部通報制度を運用する○○室長の被告丁がパワハラ行為に対して適切な対応を取らなかったことにより原告の精神的苦痛を拡大させたとして、被告丙および被告丁には不法行為が成立すると主張した。さらに、グループ再編前会社には職場環境保持義務違反を理由とした債務不履行および被告丙の使用者であること等を理由とした不法行為が成立するところ、被告会社が損害賠償債務を承継したと主張して、損害賠償金等の支払いを求めた。
判決は請求を一部認容したが、既往症等が寄与した点も大きいとして、慰謝料額の4割相当額を減じている。
決定のポイント
「新入社員以下だ。もう任せられない」というような発言は原告に対して屈辱を与え心理的負担を過度に加える行為であり、「何で分からない。おまえは馬鹿」というような言動は原告の名誉感情をいたずらに害する行為であるといえることからすると、これらの被告丙の言動は、原告に対する注意又は指導のための言動として許容される限度を超え、相当性を欠くものであったと評価せざるを得ないというべきであるから、原告に対する不法行為を構成する。…
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