医療法人一心会事件(大阪地判平27・1・29) 業務請負の看護師、年俸制で実質労働者と割増請求 時間外部分計算できず無効
病院との間で業務請負契約のほかに、年俸制の契約を締結した看護師が、実態は労働者であるとして、時間外割増等の未払賃金を求めた。大阪地裁は、医師の指揮監督下の労働であるなど労働契約の性質を有するとしたうえで、年俸に割増賃金を含む合意があっても、割増部分が法定額を満たしているか確認できず、そのような支払方法は無効とした。付加金の支払いも命じている。
双方で合意しても 医師から指揮命令
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Yの元従業員であるX1とX2がYに対し、①労働契約に基づき時間外割増賃金等の支払い、②違法に天引きされた未払い賃金の支払い、③X1、X2がYを退職した日までの賃金、④付加金の支払いを求めるとともに、X2については、雇用保険加入手続きを怠ったことによる損害の支払等を求めた事案である。
以下では、X2についてのみ検討する。
X2とYは、平成23年2月11日付で、同日から平成24年2月10日までの年俸として300万円を支払う、そして、その12分の1の25万円を毎月支払う。労働時間の内訳は、就業規則の規定に準ずるものとして、日勤週5日、週1日の夜勤を含むものとするとの契約を締結した(以下、X2年俸制契約)。
また、平成23年2月17日、業務請負契約書と題する契約を締結した(以下、X2契約書)。当該契約には、労働契約期間として同日から平成24年2月16日まで、就業の場所として医療法人一心会、従事する業務の種類として看護師、就業時間として午前9時から午後7時で休憩時間はうち120分、ただし、木、土、日曜、祝日は、午前9時から午後6時で休憩時間はうち60分、休日は火、水曜、時間外および休日労働はないこと、基本給25万円等と定められていた。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら