国・中労委(田中酸素)事件(東京地判平26・1・20) 合意に反し査定資料不提示、不当労働行為の判断は 委員長の暴言あるとしても ★
団交で賞与や昇給の査定資料を開示しなかったことが労働協約に反する等、不当労働行為とされたため、会社が中労委命令の取消しを求めた。東京地裁は不誠実な対応としたうえで、交渉の内外での委員長の暴言や暴行が一因ではあるが、不当労働行為の存在自体否定されるものではなく、救済の利益の有無に影響は及ばないとして請求を斥けた。
救済の利益認める 誠実な交渉怠った
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
補助参加人A労働組合とX社の間で、平成21年10月22日、①会社は賞与および昇給を決定次第、団体交渉の申入れを行う、②その際、組合員各々の支給予定金額を添付する、③団交は賞与および昇給の支給以前に開催する、④会社は売上、利益、その他査定に使用した資料並びに組合員各々の査定結果(査定表等)を提出する、との内容の労働協約が締結された。
同年12月19日の団交において、同月21日には、①同年冬季賞与の総額600万円の根拠となる資料、②労働協約に基づく売上、利益、その他査定に使用した資料および組合員の人事考課表を提示して説明することを合意した。
X社が労働協約、合意事項に反し、賞与、昇給に関する団交の申入れをせず、査定に使用した資料等を提示しないで、同年の冬季賞与、平成22年1月の昇給額を支給したことなどを不当労働行為として、Aは山口県労働委員会に、①団交にX社代表取締役社長を出席させ、誠実な交渉をすること、②賞与、昇給の支給予定金額を決定次第、その金額、査定に使用した資料等をAに提示して団交を申し入れ、賞与等の支給前に団交を開催すること、③謝罪文書の交付を求めて、救済申立てをした。…
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