学校法人梅光学院事件(山口地裁下関支判令3・2・2) 生徒減り赤字状態、職能等級導入し賃金2割減 変更する高度の必要性なし
学生の定員割れが続き毎年赤字状態であることから、給与規程を業績を評価する職能等級に変更した事案。賃金等が減った教員ら10人が、不利益変更は無効として差額支払いを求めた。裁判所は、収益の状況などから制度変更に高度の必要性はないと判断。代償措置の調整手当を考慮しても、2割を超えて年収が減るなど不利益は相当大きく新規程の内容は合理性を欠くとした。
不利益相当大きい 調整手当を支給も
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
ア Yは大学(以下「本件大学」)、高校等を設置する学校法人であり、X1~X10(以下「Xら」)は本件大学に教員として勤務していた。
イ Yは、その運営する学校において長年にわたり生徒・学生の定員割れが続き、毎年2億円の赤字を計上する状態が継続していたことから、将来の安定的な存続を確保するための改革が必要と考え、平成24年、統轄本部を設置した。同部が中心となって具体的方策を検討した結果、旧就業規則は、年功序列型の賃金体系であったが、Yは、評価を加味した処遇が必要と考え、新就業規則への変更(以下「本件変更」)に着手した。
ウ 旧給与規程では、給与の種類は、①本俸、②手当(扶養手当、住宅手当、職務手当、調整手当)、③退職手当などとされていた。このうち、教員の本俸は、対象者の号俸および級をもとに決定され、号俸は慣習上、毎年1号ずつ昇級する運用となっていたが、新給与規程では業績を評価した職能等級と年齢による号俸を組み合わせた新たな等級を適用することになった。また、住宅手当は廃止、扶養手当は配偶者および子について各々5500円、その他の扶養家族について2000円の減額となった。
加えて、旧退職(金)規程では、本俸に各手当を合計した俸給月額を基準としていたが、新退職(金)規程では、本俸のみの俸給月額に基づき算定することとされた。…
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