安藤運輸事件(名古屋高判令3・1・20) 運行管理業務で中途採用、倉庫部門へ配転は? キャリア形成への配慮欠く

2022.02.03 【判決日:2021.01.20】
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 運行管理業務から倉庫業務への配転を無効と訴えた事案。運行管理業務の担当者として入社後2年弱従事していた。名古屋高裁も一審同様に入社した経緯や面接でのやり取り等から、配転に当たっては、能力・経験などキャリアを活かすことへの期待に配慮すべきと判示。配転に業務上の必要性は認められず、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が及ぶとして配転を無効とした。

「著しい不利益」に 業務上必要性なし

筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 Xは、運行管理者の資格を有し、Yに入社する以前、複数の会社において運行管理業務や配車業務に従事した経験があり、Yにおいても、運行管理業務や配車業務に従事していた。しかし、乗務員からしばしばクレームが寄せられ、取引先から車回入力の遅れや輸送事故の頻発につき注意を受け、また、X着任後、高速道路の使用料が増加するなどのことがあり、Yは、Xの入社約1年7カ月後、Xに対し、本社倉庫部門の倉庫業務への配転を命じた。

 Xは、本件配転命令は職種限定の合意に反しまたは権利の濫用に当たり無効であると主張して、本社倉庫部門に勤務する雇用契約上の義務のないことの確認を求める訴えを起こした。原審(名古屋地判令元・11・12)は、職種限定の合意が成立したとは認められないとしつつ、配転に当たっては、運行管理者の資格を活かし、運行管理業務や配車業務に当たっていくことができるとするXの期待への配慮が求められるとしてXの請求を認容し、Yはこれを不服として控訴した。

判決のポイント

1 職種限定合意の有無

 職種限定合意…を直接的に裏付ける雇用契約書、労働条件通知書などの書面はないこと、求人票…も…「事務職員(運行管理業務)採用条件」…にも、従事する業務は限られる旨の文言…はないし、…就業規則には、職種を限定した従業員の存在を前提とした規定はなく、他方で、業務の必要により職種の変更があり得ることが規定されていることによれば、…職種限定の合意が明示又は黙示に成立したとは認められない。…

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令和4年2月7日第3339号14面 掲載
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