丙川商店事件(京都地判令3・8・6) “業務上”傷病を休職と誤記、満了時の扱いは? 自然退職適用できず無効に
私傷病である適応障害の休職期間が満了したため、自然退職となった従業員が地位確認等を求めた。休職規定では業務「上」の傷病を対象としていて、会社は誤記と主張した。京都地裁は、文言と正反対の業務外に読み替えて、労働者の不利に適用することは、労働者保護の見地から権利義務を明確化するために制定する就業規則の性質に照らし採用し難く、退職扱いを無効とした。
業務外へ読替不可 労働者には不利で
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yの従業員として稼働していたXが、適応障害等を発症したとして、平成29年11月2日から休職していたが、平成30年7月17日付け主治医の診断書では適応障害・急性ストレス反応と診断され、勤務不可能であり、3カ月の自宅療養が必要であると記載されていた。Xは平成31年1月16日にYに出社したが、Yは就労を拒絶した。その後、令和元年10月9日、第1回弁論準備手続き期日においてYが主位的に、Xにつき平成30年8月2日付けで休職期間満了による退職扱いを主張し(以下「本件各退職扱い」)、また、令和元年9月30日到達のY準備書面により、予備的に令和元年10月30日付けで解雇するとの意思表示(以下「本件各解雇」)をしたことから、Yに対し、本件各退職扱いおよび本件各解雇はいずれも無効であると主張して、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案である(Xの他にもう1人が原告となっているが、割愛する)。
なお、Yの就業規則には次の定めがあった。…
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