O工業事件(名古屋地決令3・7・5) 誠実な団交求める横断幕や旗、会社が撤去請求 組合活動で施設管理権侵害
本社敷地内に「誠実に交渉に応じろ」などとした横断幕や旗を設置した組合に対して、会社が撤去を求めた。正当な争議権の行使、組合活動という主張に対し、名古屋地裁は、こう着した賃上げ交渉を有利に進める目的で幕等を掲揚したもので正当性は認められるが、内容は通行人らに会社が違法行為を行っている印象を与え、信用を毀損すると判断。施設管理権や所有権を侵害するとした。
信用を損なう内容 掲示理由は正当も
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は昭和29年5月に自動車用精密樹脂部品の製造を目的として設立され、従業員は248人である。従業員は、令和元年12月16日、甲労働組合を結成した。JMITU愛知地方本部およびJMITU愛知支部は、甲労働組合の上部団体である。
甲労働組合らは、令和3年1月8日未明頃および同月26日未明頃、会社が所有する本社の正面脇のフェンスの公道側にそれぞれ横断幕1枚、合計2枚を設置した。また、同月11日夕方から同月12日早朝までの間、公道からも見通せる本社の正門近くのフェンス内側にのぼり旗6本を設置した。
会社は、前記のぼり旗等の撤去を求めたが、甲労働組合らはこれに応じなかったことから、会社が甲労働組合らに対して、のぼり旗等の撤去を求める仮処分を申し立てたものである。
争点は、甲労働組合らの本件のぼり旗等の設置が会社の所有権および施設管理権を侵害しているか。また、会社が甲労働組合らに対して、本件のぼり旗等の撤去を求めることが権利の濫用に当たらないか、さらに、その撤去を求める保全の必要性はあるのかの2点にある。本決定はおよそ以下のように判示して会社の申立てを認めた。
決定のポイント
(1)本件のぼり旗等は、…
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