日本通運(川崎・雇止め)事件(横浜地裁川崎支判令3・3・30) 有期契約開始当初から5年上限、雇止め有効か 無期転換制の潜脱当たらず
5年を超えて更新しない条件で労働契約を締結してその後雇止めされた事務員が、無期転換権の回避が目的で無効と訴えた。横浜地裁川崎支部は、更新上限は直ちに違法にならないとしたうえで、労使協議で社内ルールを定めて契約期間は5年を上限としており、法の潜脱に当たらないと判断。運用の実態も踏まえて、契約更新の期待は合理的といえず、雇止め有効とした。
労使間でルール化 更新期待生じない
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、派遣社員としてY社のオイル配送センターで約9カ月間就労し、その後、事務員として、同社と有期雇用契約を締結した。雇用契約には「最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない」と明記され、また、雇用契約締結に際して、課長から有期雇用契約であることや更新の可能性およびその判断基準等、更新する場合でも通算5年を超えて更新することはないこと等の説明があり、Xは雇用契約書に署名捺印して契約書の交付を受けたほか、説明内容の確認票にも署名押印した。Y社は更新の都度、更新上限の記載のある契約書の締結をし、4回目の更新時には、所長が面談して、5年上限を超えることになる平成30年6月29日を超えて更新することはない等の説明を行い、Xは、同日を超える更新はしない旨記載された雇用契約書および説明内容確認票に署名押印した。
Y社は次回更新をせず雇止めとしたが、Xは5年上限条項は無期転換申込み回避を目的とするもので無効であり、労働契約法19条に照らして雇止めは許されないとして訴えを提起した。
判決のポイント
1 5年満了時の更新期待の有無
本件においては、…
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