医療法人社団悠翔会事件(東京地判令3・3・31) 医師を1カ月間有期雇用、契約更新1回でクビ 通算2カ月目の雇止め有効
1カ月の有期雇用契約を締結した非常勤医師が更新1回で雇止めされたため、地位確認を求めた。医師は当初、期間を定めない労働条件を提示されたが、眼をケガしたため非常勤として採用された。東京地裁は、契約締結に至る事情から更新期待には合理的理由があると認定。一方、更新の期待度は高いとはいえず、通院により勤務できないなど業務に支障を及ぼすことから雇止め有効とした。
更新期待度は低い 持病あり診療支障
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Yに雇用されていた医師であるXが、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めたものである。Xは、主位的に、雇用契約は期間の定めのないものであるから、Yが同雇用契約を終了させたことは解雇であり、同解雇は解雇権を濫用したものとして無効であると主張し、予備的に、雇用契約が有期雇用契約であるとしても、労働契約法19条により、同雇用契約は更新されていると主張した。
Xは、平成28年3月1日から同年4月30日までの間、医師として、主に在宅訪問診療業務に従事した。Yの作成した本件内定同意書には、Xの署名押印がなされている。労働条件は、①契約期間:平成28年3月1日から同月31日(1カ月単位で更新)、②雇用形態:非常勤医師、③勤務日:月・火・木・金の週4日半日勤務、④勤務時間:午前勤務、原則9~13時、午後勤務、原則13時から18時、⑤給与:給与は半日勤務、1日当たり5万円(残業代込み)等が記載されていた。
本件雇用契約書には、Xの署名押印およびYの記名押印がなされている。本件雇用契約書には、本件内定同意書に記載された労働条件と同様の内容が記載されている。
Y理事長は、本件雇用契約書を取り交わす前である平成27年12月22日、Xに対し、期間の定めのない労働条件を提示したが、平成28年1月8日、Xが負傷(左眼窩骨折、左網膜裂孔の傷害、以下「本件受傷」)を負ったため、XがY理事長に対し、非常勤として勤務し、4月からの正式入職はその結果をみてあらためて相談させてほしい等と伝え、その結果、本件内定同意書および本件雇用契約書の取り交わしに至った。その後、Yは、Xに本件雇用契約を更新するため4月分雇用契約書を郵送し、返送するよう依頼したが、Xは4月分雇用契約書を返送しなかった。
Yは4月30日、Xに対し本件雇用契約を終了する旨の通知をした。
本件の争点は、①本件雇用契約における期間の定めの有無等、②本件雇用契約終了の有効性等であるが、②について紹介する。
判決のポイント
労働契約法19条2号の適用の肯否
XとYは、…
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