みずほ銀行事件(東京高判令3・2・24) 情報漏えいで解雇、退職金3割とした一審は? “勤続の功”跡形もなく消滅
情報漏えいを理由に懲戒解雇し、退職金を不支給とした事案の控訴審。3割支給を命じた一審に対して東京高裁は、情報の厳格管理や顧客情報の秘密保持が求められる銀行業の信用を著しく毀損する行為で、永年の勤続の功を跡形もなく消し去るのは明確と判断し、全額不支給とした。漏えいした対外秘の行内通達は雑誌やSNSに掲載され、漏えいの悪質性の程度は高いとしている。
銀行業の信用毀損 SNSなどで拡散
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
一審原告は、対外秘である行内通達等を無断で多数持ち出し、出版社等に漏えいしたこと等を理由として懲戒解雇され、一審被告の退職金規程に基づき退職金の支払いを受けられなかったことにつき、被告に対し、本件懲戒解雇による精神的損害として不法行為に基づき5000万円の支払いを求めた。併せて、一審原告は、①主位的に、本件懲戒解雇は無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、本件懲戒解雇後の賃金等の支払いを求め、②予備的に、被告が指摘する退職金不支給事由は原告のそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為ではなく、退職金を不支給とすることは許されないと主張して、退職金1223万余円等の支払いを求めた。一審(東京地判令2・1・29)は、原告の主位的請求を全部棄却し、退職金請求額の3割を認容した。そこで、原告が控訴し、被告が附帯控訴した。
判決のポイント
懲戒解雇の処分を受けた者については、原則として、退職金を不支給とすることができると解される。ただし、懲戒解雇事由の具体的な内容や、労働者の雇用企業への貢献の度合いを考慮して退職金の全部又は一部の不支給が信義誠実の原則に照らして許されないと評価される場合には、全部又は一部を不支給とすることは、裁量権の濫用となり、許されない。
第一審原告の懲戒事由は、…
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