広島山陽学園事件(広島高判令2・2・26) 退職後発覚した非違行為、訴訟で主張できる? 雇止め理由の追加を認めず
雇止めされた教員が地位確認を求めた事案の控訴審。学校は、訴訟において雇止め後に発覚した非違行為を追加主張した。広島高裁は、退職証明書に記載のない事項は、雇止めの事情として考慮できないと判断。証明書は労働者に解雇の効力を争うか否かの便宜を与えるためのもので、労基法の立法趣旨に反するとした。1年分の賃金支払いを命じたが、次期更新時の雇止めは有効とした。
証明書に記載なし 1年分賃金命じる
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、控訴人(一審原告)が、被控訴人(一審被告)との間で締結した、平成23年4月1日を始期とする期間1年の労働契約が3回にわたり更新されたものの、平成27年4月1日には更新されなかったことについて、本件労働契約が期間の定めのない労働契約に転化していた、または、労働契約法19条1号もしくは2号により更新されたなどと主張して、被控訴人に対し、(1)雇用契約(本件労働契約)上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)本件労働契約に基づく賃金請求を求めた事案である。
原審(広島地判平30・10・31)は、控訴人の訴えのうち原判決確定後の賃金請求に係る部分を却下し、控訴人のその余の請求をいずれも棄却したところ、控訴人が本件控訴をした。
判決のポイント
労働基準法22条1項は、労働者が、退職の場合において、使用者に対し、退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書を請求することができる旨定めており、また、これを受けて平成15年厚労省告示2条(平成24年厚生労働省告示551号により一部改正)は、3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係る有期労働契約を使用者が更新しないこととしようとする場合において、…
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