みよし広域連合事件(徳島地判令3・9・15) 飲酒運転の車両へ部下同乗、本部長を戒告処分 監督不行届での懲戒無効に
友人と飲酒後、友人が運転する車に同乗した職員を懲戒免職としたうえ、消防長を監督不行届で戒告処分した事案。戒告処分の無効を求めた訴訟で徳島地裁は、消防長は飲酒運転の注意喚起を行っており、管理監督義務の懈怠を否定。私生活上の非行に及ぶ蓋然性が高いといった事情は認識できないとした。部下への指導監督は直属の長である消防署の署長らに委ねざるを得ないとしている。
私生活含めて注意 事前認識できない
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y広域連合消防本部(以下「Y消防本部」)の消防長の職にあった者であるが、平成30年に2カ月、病気休暇を取得し、その間、Y消防本部においては、消防本部次長を職務代理者と定めていた。
Xの病気休暇中、Y消防本部およびA消防署を兼務する訴外職員Pは、友人と飲酒後、友人が飲酒運転をする自動車に同乗していたところ、当該友人がひき逃げ死亡事故を起こし、本件事件につき、Pは懲戒免職、Xは、管理・監督者として日頃の監督不行届であるとして戒告、その他、次長、消防総務課長も戒告の懲戒処分に処せられた。
また、定期昇給について、55歳を超える者については、2号給昇給となるのが原則であるところ、Xは、本件処分を理由に原則より1号給低く、また2カ月間の病気休暇があったことを理由に、さらに1号給低く評価されたため、昇給は行われなかった。
Xは、本件処分の取消しを求めるとともに、本件処分のため本来行われるべき定期昇給がなされず、定期昇給分の給与の支払いがなされていないとして、未払分等を請求して提訴した。
判決のポイント
1 病気休暇中の責任
本件事件発生時、Xは、病気休暇取得中であり、部下職員に対する指導監督を行うことは期待できず、…
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