龍生自動車事件(東京地判令3・10・28) コロナで収入激減、タクシー会社解散しクビに 解雇の手続的配慮あり有効
新型コロナウイルスの影響で事業継続が不可能になったとして、タクシー会社が全従業員に解雇を通告したうえ解散した。乗務員の解雇無効の訴えに対して、東京地裁は、整理解雇の法理によるのでなく、解雇の手続的配慮や不当な目的の有無を判断。予見困難な事態であり、団交で経営状況等に関し情報提供したことや低額だが退職慰労金の支給など、一応の配慮がなされ解雇有効とした。
団交で情報を提供 低額だが「慰労金」
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社はタクシー営業等を行う株式会社で、令和2年5月の従業員数34人(タクシー部門30人、事務部門4人)、保有車両台数23台余りだった。
甲は、平成14年11月1日以降、会社と労働契約を締結し、タクシー乗務員として稼働してきた。
会社は、甲を含めた全従業員に対し、令和2年4月15日、近年の売上げ低下および新型コロナウイルス感染症拡大に伴う更なる売上げの激減により事業の継続が不可能な事態に至ったとして、同年5月20日をもって解雇するとの意思表示(本件解雇)をした。そして、本件解雇からその効果が発生するまでの期間を解雇予告期間とし、その後、会社は同年6月2日、臨時株主総会の決議により解散、清算手続きを開始した。これに対して、甲は本件解雇が無効であると主張して労働契約上の地位確認、および本件解雇および本件訴訟における会社の主張・代理人の言動が不法行為を構成するものとして損害賠償等を求めたものである。
本件の争点は、会社の解散・清算を前提とした解雇に整理解雇の法理の適用があるかである。仮に、適用ありとすると、判例の蓄積により確立された整理解雇の4要素(①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務履行の有無、③被解雇者選定の相当性、④手続きの妥当性)の適用の可否が問題となる。本判決はおよそ以下のように判示して、甲の請求を斥けた。
判決のポイント
(1)会社は、…
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