山形大学事件(最二小判令4・3・18) 無理な団交強いると労委命令取消した原審は 誠実団交 “合意見込み”問わない ★
誠実に団交に応じるべきとされた大学が、労働委員会の救済命令の取消しを求めた行政訴訟。合意する見込みのない団交を強いたとして同命令を取り消した原審に対して、最高裁は、誠実交渉義務に違反した場合には合意成立が見込まれなくても、同命令を出せると判示。誠実な交渉により労組は十分な説明や資料の提示を受けられるため、正常な集団的労使関係秩序の回復に寄与するとした。
説明や資料は有益 関係の回復に寄与
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、労働組合である上告補助参加人から、使用者である被上告人の団体交渉における対応が労働組合法7条2号の不当労働行為に該当する旨の申立てを受けた処分行政庁が、一部救済したことに対する使用者側の行政訴訟である。本件命令は本件各交渉事項に係る団体交渉における被上告人の対応につき、昇給の抑制や賃金の引下げを人事院勧告と同程度にすべき根拠についての説明や資料の提示を十分にせず、法律に関する誤った理解を前提とする主張を繰り返すなどかたくななものであったとして、労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するとしたうえ、被上告人に対し、本件各交渉事項につき、適切な財務情報等を提示するなどして自らの主張に固執することなく誠実に団体交渉に応ずべき旨を命じ(本件認容部分)、その余の申立てを棄却したものである。
判決のポイント
労働組合法7条2号は、使用者がその雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むことを不当労働行為として禁止するところ、使用者は、必要に応じてその主張の論拠を説明し、その裏付けとなる資料を提示するなどして、誠実に団体交渉に応ずべき義務(以下「誠実交渉義務」という)を負い、この義務に違反することは、同号の不当労働行為に該当するものと解される。そして、使用者が誠実交渉義務に違反した場合、労働者は、当該団体交渉に関し、使用者から十分な説明や資料の提示を受けることができず、誠実な交渉を通じた労働条件等の獲得の機会を失い、正常な集団的労使関係秩序が害されることとなるが、その後使用者が誠実に団体交渉に応ずるに至れば、このような侵害状態が除去、是正され得るものといえる。そうすると、使用者が誠実交渉義務に違反している場合に、…
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