学校法人専修大学(無期転換)事件(東京地判令3・12・16) 大学の非常勤講師、無期転換まで10年間必要!? 5年ルール適用し地位確認
無期転換権の行使を拒否された大学の非常勤講師が、期間の定めのない地位確認等を求めた。大学は、10年経過しなければ転換権がないとする科技イノベ活性化法の適用があると主張した。東京地裁は、研究開発や関連業務に従事せず研究者には当たらないとして請求を認めた。職務は授業や試験等に限られ、研究で裏打ちされた見識に基づくとしても業務自体は研究等に該当しないとした。
研究者に当たらず 授業や試験が業務
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Yは、S大学などの大学を設置している学校法人であり、Xは、S大学において、A語の非常勤講師として就労してきたものである。
平成元年4月1日ごろ、YとXは、約1年の有期労働契約を締結し、労働契約法18条が適用される平成25年4月1日以後も更新してきた。Xは、学部生に対し、教養科目としてのA語の初級から中級までの授業、試験および関連する業務を担当しているが、研究関連業務には従事しておらず、研究室の割当てや研究費の支給も受けていない。
令和元年6月20日、XはYに対し、Xが組合員として加入するF組合とYとの団体交渉において、同組合を通じて、労契法18条1項の無期労働契約への転換申込権が発生したと主張して、無期労働契約を申し込む旨の意思表示をした。同年12月16日、YはF組合に対し、XとYとの間の労働契約は、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(以下「科技イノベ活性化法」)15条の2第1項1号に該当し、契約期間が10年を超えるまで無期転換申込権は発生しないため(以下「10年超えの特例」)、Xに無期転換申込権を認めることはできない旨回答した。
Yは、本件無期転換申込みの有期労働契約の契約期間満了日の翌日(令和2年3月14日)に至っても、Xの無期転換申込権を認めなかった(なお、YとXとの間の労働契約は本件訴訟時も継続しているが、Yは、期間の定めがある旨主張している)。そこで、XはYを相手に、期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めて提訴した(Xは、Yが無期転換申込権を認めない取扱いをしたことが不法行為に該当するとして損害賠償も求めたが、この点については本稿では省略する。なお、請求を棄却している)。
判決のポイント
ア (Xは、不法行為に基づく損害賠償を求める給付の訴えを提起しているが)Xに無期転換申込権があるからといって、…
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