福星堂事件(神戸地裁姫路支判平28・9・29) 早朝にタイムカードを打刻、未払賃金400万円求める 「過大な割増請求」で5割減
タイムカードに基づき、朝4時台の早出残業など約400万円の割増賃金を求めた。神戸地裁姫路支部は、始業前の就業について指揮命令下にあることの主張立証が必要としたうえで、会社は日報の提出を求めたが拒否されるなど残業を黙認していたとはいえないと判断。時間外労働の事実は否定できないが、請求額は相当に過大とした。請求額の5割と、一部付加金も認めた。
日報求めたが拒否 黙認ともいえない
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、和洋菓子の製造・加工並びに販売等を主たる目的とする株式会社である。
従業員甲は、平成21年12月1日、期間を定めずに雇用され、労働契約を締結した。甲の業務は菓子の運送業務で、勤務形態は月曜日から土曜日までで、始業時刻が午前8時30分、終業時刻が午後5時30分で、給与の支払日は毎月末締翌月10日払いであった。
労基則19条1項4号(月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数で除した金額)に基づいて計算すると、甲の1時間当たりの賃金額は、平成24年が1422円、平成25年が1470円、平成26年が1485円であった。
甲は、平成26年4月30日をもって会社を退職したが、退職後にタイムカードの打刻に基づいて、早朝深夜時間帯、早出残業時間帯、休憩時間帯、休日労働等の残業代と労基法114条の付加金の請求を求めて訴えを提起した。
本件の争点は、①甲は会社に対して未払いの時間外労働割増賃金(特に所定の就業開始時刻までに時間外労働をしていたか)の請求権を有するか、②付加金の支払いまで請求できるかの2点である。…
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