河合塾事件(東京地判令3・8・5) コマ数削減を拒否した予備校講師の雇止めは? 労働条件引下げに“合理性”
契約更新時に担当授業のコマ数の削減を提示された予備校講師が、従前と同じ条件で更新を求めたところ雇止めされたため、地位確認を求めた。東京地裁は、更新の合理的期待を判断するうえで、更新の概念は同一の条件による再締結を意味するものではないとした。評価をもとにコマ数を削減された講師が存在する中で、1コマ減に留めたことは合理的などとして雇止めを有効とした。
評価で内容は変動 地位確認を認めず
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は全国に27校の大学受験予備校を設置する学校法人である。原告は講師として、被告との間で期間1年間の出演契約を締結し、平成6年度~28年度まで、契約更新を繰り返していた(なお平成21年度以前は業務委託契約に基づく非常勤講師であった)。
被告は、毎年4月を始期とする出演契約を各講師との間で締結するに際し、各科目の設置講座予定数、各講師の希望、講師評価制度(授業評価および授業以外の担当業務への寄与度などから総合評価)に基づく評価をもとに各講師の出演契約の更新の有無・コマ数・コマ単価等を決定し、その内容に異議がない講師との間で同年度の出演契約を締結していた。
平成27年度~29年度までの間、コマ数を0と提案され契約更新しなかった講師は、原告が所属するエリア内では最大2人であり、またコマ数減の提案をされた講師の減少コマ数の最大値は3コマであった。原被告間の出演契約においても、担当コマ数や基本賃金は、毎年、必ずしも同一ではなかった。
平成29年度の出演契約について、被告は、原告に対し、原告が被告施設内にて無断で文書配布を行って懲戒処分を受けたこと、生徒からの授業アンケートの結果が芳しくなかったこと等を理由に、平成28年度よりも2コマ減の合計6コマとし月額基本給を約26万円(平成28年度は約33万円)とする提示を行ったところ(本件コマ数減提示)、原告から従前と同じ労働条件による契約更新の申込みを受けたが(本件申込み)、被告が本件申込みを承諾できないと回答したため(本件回答)、平成29年度の出演契約は締結されなかった。
原告は雇止めは無効であると主張して訴訟提起した。
判決のポイント
① 労働契約法19条2号にいう「更新」は、…
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