Hプロジェクト事件(東京地判令3・9・7) “アイドルは労働者”として未払最低賃金求める タレント活動に諾否の自由
農業活性化を図るため結成されたグループのアイドルの労働者性を争った事案。最低賃金法の適用に関して、東京地裁は、販売応援など各タレント活動を行うか否かの「諾否の自由」を有しており、労働者性を否定。イベント参加を促す発言は認められるが、参加の自由を制約するとまではいえないとした。報酬は収益の一部を分配するもので、労務の対償としての性質は弱いとしている。
イベント強制せず 労務対償性は弱い
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Aの相続人であるXらが、Aとアイドル活動等に関する専属マネジメント契約等を締結していたYに対し、Aは労働基準法上の労働者であると主張した事案である。Aが従事した販売応援業務に対する対価として支払われた報酬額は、最低賃金法所定の最低賃金額を下回るとして、労働契約に基づく賃金請求権として、上記報酬額と最低賃金法所定の最低賃金額との差額等の支払いを求めた。
Aは、中学2年生であった平成27年にYとの間で研修生契約を締結し、それ以降、Yに所属するアイドルグループである本件グループのメンバーとして活動していた。
Yは、農産物の生産、販売等をするとともに「農業アイドル」として活動するタレントの発掘、育成等に関する業務等を行う株式会社である。
Aは、Yとの間で、タレント専属契約を締結するまでの研修期間などを定めるものとして、平成27年7月12日付けで研修生契約書を締結した。Aは、同契約に基づき、Yに対し、トレーナー代およびスタジオ代として月額2500円を支払い、レッスンを受けるなどした。その後も専属B(研修生)、専属A(レギュラー)、レギュラーメンバートレーニングおよび専属契約をそれぞれ締結し、平成29年に再度、レギュラーメンバートレーニングおよび専属マネジメント契約(以下「本件契約」)を締結した。なお、これら契約には、就業時間や賃金に関する規定はなかった。
本件契約には、上記の他、…
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