正和機器産業事件(宇都宮地決平5・7・20) 工場閉鎖に伴う転勤・希望退職に応じなかった者への解雇
意向確認の詰め欠き“濫用”
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
債務者は、主に潤滑油装置及び油圧機器等を製造する会社で、本社のほか、大宮工場、鹿沼工場を有していた。債権者9名はいずれも債務者の従業員で、鹿沼工場に勤務していた。
債務者は、平成4年10月22日、労働組合との団体交渉において、潤滑・油圧機器の受注生産高が減少したため経営規模を見直すとして、①大宮工場と鹿沼工場を統合し、鹿沼工場を同5年11月末日を目処として閉鎖すること、②鹿沼工場閉鎖後の大宮工場の人員規模を100名とし、余剰人員となる46名を両工場から希望退職者として募集することを骨子とする「会社再建に関する提案」を行った。債務者と労働組合との間で数回にわたって団体交渉が開かれたが、交渉は平行線をたどり合意に達しなかった。
債務者は、平成5年1月18日から同月27日まで転勤希望者及び希望退職者の募集を実施し、希望する者に対して個人面談を行ったところ、鹿沼工場で53名、大宮工場で2名が希望退職募集に応じた。鹿沼工場に勤務していた債権者らを含む13名の従業員が平成5年1月27日までに転勤希望・希望退職のいずれにも応じなかったので、債務者は、同月末日をもって鹿沼工場を閉鎖することに伴い、同年3月5日付をもって債権者らを解雇した。
そこで債権者らは、右解雇が解雇権の濫用などで無効であるなどと主張して地位保全、賃金仮払いの仮処分を申請し、裁判所は解が無効であるとして賃金仮払いの限度で右申請を認めた。
決定のポイント
1、債務者が…
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