日東電工事件(広島地裁福山支判令3・12・23) 退職日の日付なし、合意していないと地位確認 受理承諾され“撤回”認めず
退職願を提出した従業員が、退職希望日の日付を入れず無効であり、また後日撤回したとして地位確認を求めた。裁判所は、届出の内容から労働契約を終了させる意思は明らかとした。退職願の返還を求めておらず行動が整合しないなどとして撤回も認めなかった。部長が退職を承認し、電話で退職願を受理したことを伝えており、合意解約は成立したとしている。
辞める意思明らか 書面返還要求なく
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y社との間で有期労働契約を締結していたが、雇用期間の途中である令和2年1月30日、部長に対し、Xの署名・押印のある「退職願」2通を提出した。いずれも「退職いたしたくご許可下さるようお願い申し上げます」とあったが、そのうちの1通は、退職日の記載なく、作成日付欄に「2020年1月6日」の日付が手書きされ、事由欄に「一身上の都合による」と手書きされていた。もう1通は、退職日について「2020年 月1日付」とあり、事由欄は「別紙のとおり」と手書され、「退職理由(事由)」と題する別紙が添付されていたが、作成日付欄は空欄であった(以下これらを「本件各退職願」という)。
Xは、本件各退職願に退職日についての記載がないことから、退職の意思表示がなされたとはいえず、また、2月3日午前に部長ほか1人の管理職と話合い(以下、「本件話合い」という)をした際に、合意解約の申込みを撤回したと主張して辞職または合意解約による雇用終了を争った(退職無効であることを前提に、その後、契約更新された旨の主張もあるが、その点は本稿では割愛する)。
判決のポイント
1 「辞職」の有無
本件各退職願…
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