空港環境整備協会事件(東京地判平6・3・31) 退職手当規程の変更による退職金支給率の引下げは有効か
受忍すべき合理的な内容
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、俸給が低く、退職手当が高いという状況で給与制度全体としてバランスを欠いていること、俸給が職務と責任に対応せず公務員に比し低いこと、退職手当が高水準で、しかも支給限度額がないなど不相当であり、定年延長を前提として是正する必要があることなどから、退職手当を含む給与制度を見直すこととした。
そして、昭和62年3月31日に定年を57歳から60歳に延長した上で、同63年3月1日に給与規程を改訂するとともに、退職手当規程を変更し、勤続期間24年以下の者に対する退職手当は、退職の日におけるその者の俸給月額に、勤続期間を区分して定める割合を乗じて得た額の合計とするとして、その金額を引き下げた。
被告は新しい給与規程及び退職手当規程を同62年10月1日に遡って施行したが、施行日前日に在職する職員については、新規程による退職手当の額が、旧規程による施行日の前日における退職手当の額に満たないときは、その差額を、新規程による退職手当の額に加算して支給するとした。
原告(昭和50年4月1日採用、平成2年9月30退職)は被告から、新退職手当規程による退職手当388万5850円と、加算額233万4500円との合計622万350円の退職手当を受領したが、旧退職手当規程により退職手当を計算すると932万6040円となるとして、被告に対し、その差額の支払いを求めたが、東京地裁は退職手当規程の変更は合理性があり、原告がその変更に同意をしていないとしても、拘東されるとして請求を棄却した。
判決のポイント
1、退職金など労働者にとって…
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