共栄火災損害調査事件(秋田地決平5・5・17) 単身赴任が避けられない転勤命令と業務上の心要性は
1994.10.03
【判決日:1993.05.17】
事業運営の円滑化でもOK
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、損害保険会社の子会社の秋田事務所において、事故調査及び損害査定の業務を担当するアジャスターとして勤務していた労働者が、その担当業務に関し、保険契約者あるいは損害保険会社の代理店から再三にわたり苦情を申し入れられ、また職場内において他の社員との協調性を欠いている等の事情が生じたため、東京事務所へ転勤を命じられたことにつき人事権の濫用であるとして転勤命令の効力を争ったものである。本件において労働者は、アジャスターについては、転居を要する転勤命令は、本人の希望に基づく場合ないしは若年の労働者に限られており、50歳近くのしかも妻子をもつ者に対する本件の如き転勤は異例であり不当な人事であること、妻は秋田市内で幼稚園の教諭をしており子供は扶助を要する年齢である上、持家がありローンの返済の必要性があることから秋田を離れることは困難であり、また父母は老齢で秋田を離れることはできないことなどの事情があるため、本件転勤命令に従うとすれば、単身赴任をせざるを得ないが、前記事情から本件転勤命令は著しい不利益を与えるものであり人事権の濫用であると主張した。
決定のポイント
① 債権者の調査業務について…
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平成6年10月3日第2027号10面 掲載