トヨタ工業事件(東京地判平6・6・28) 懲戒解雇に該当した従業員に退職金支払わなくてもよいか
不支給規定は限定して適用
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲(第一営業部課長)は、昭和54年10月8日に、乙は昭和62年4月27日にトヨタ工業側と各々雇用契約を締結した。平成5年4月14日招集された会社の幹部会において、甲らが行った同年4月9日の屋形船を仕立てた花見会について意見を交わした結果、甲に対し、社員が大勢で行動する場合は事前に報告すること、未成年者や女性を遅くまで連れて行動することは厳に慎むこと、仕入業者と飲食する場合は、経済的負担をかけないこと等を伝達した。しかし、甲および乙は、こうした注意を受けたことを不満として、翌日、甲および乙をはじめ第一営業部の社員は出勤せず、集団で職務をボイコットした。
会社は、甲および乙に出社命令を出したが、当日(4月15日)は出社せず、16日は乙は出社し、就業を拒否した理由について、会社を改革しようとした等と反抗的態度を維持した。甲は、16日も出社しなかった。
会社は、自宅待機命令を行った後、甲乙に反省の意思がないとして、懲戒解雇事由を定めた就業規則を適用、「職場の秩序を乱した」その他の該当事由により、平成5年4月21日、甲乙両名を懲戒解雇した。会社の退職金規程によると、懲戒解雇に該当する従業員には退職金を支給しない旨の規定があり、会社は甲および乙に対して退職金を支給しなかった。
甲乙は、会社の退職金規程に基づく退職金の支払いを求めて提訴した。
判決のポイント
本件の争点は…
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