学究社事件(東京地判令4・2・8) 同意しないまま2年連続年俸減らされ差額請求 賃金改定の定め合理性欠く
2年連続の年俸減額は一方的で無効として、塾講師が差額賃金等を求めた。契約書等では評価で減給するとしていた。東京地裁は賃金が重要な労働条件の1つであり、合理的な算定方法を合意した場合に限り、会社は年俸額の査定・決定権限を有すると判断。給与規定等では昇給率の算出方法を授業アンケート結果によるなどと抽象的にしか定めず、合意は成立していないとして請求を認めた。
極めて抽象的基準 合意成立と認めず
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Xらは、進学塾を経営するYとの間で平成28年4月1日に期間の定めのない労働契約を締結し、専任講師として就業していた。
Yが令和元年6月~2年5月までのXの年俸(以下「令和元年度年俸」、399万3510円)を一方的に減額し、さらに同年6月~3年5月までの年俸(以下「令和2年度年俸」、379万9094円)を一方的に減額したとして、Xは、同年6月以降も賃金の未払いまたは不払いの違法が続いていると主張した。Xは、主位的には労働契約に基づく未払賃金請求として、予備的には不法行為に基づく損害賠償請求として、平成30年6月~令和元年5月までの年俸(以下「平成30年度年俸」、401万6000円)の月例給与額(33万4600円)と令和元年6月分~3年12月分までの月例給与額との差額等の支払いを求めた。
Xが署名押印した労働条件通知書兼雇用契約書には、賃金に関して、基本賃金400万円(年俸額)、対象期間は平成28年4月1日~29年5月31日まで、年俸額の見直しは、原則として毎年6月1日、見直しは、勤務態度・職務能力等の評価の結果を踏まえ、加給または減給を決定することで行う、としていた。
Yは、年俸額を算定するための基準として「年俸改定機械判定の算出方法」を定め、平成28年ごろから、この基準に基づいて算定した年俸額を各労働者に通知するという運用をしていた(なお、年俸改定機械判定の算出方法は開示されていなかった)。
Yは、Xに対し、平成30年5月ごろ、翌年度の年俸額を記載した年俸通知書を交付し、Xは、年俸通知書の記載内容に合意した。その後、令和元年5月ごろ、令和元年度年俸額を提示されたがXは合意せず、令和2年度年俸額についても合意しなかった。
判決のポイント
XとYは、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら