浜田事件(大阪地裁堺支判令3・12・27) 賃金規程や契約書なし、外勤手当は割増賃金? 固定残業代の個別合意有効
就業規則に明記のない固定残業代は無効として割増賃金等の支払いを求めた事案で、大阪地裁堺支部は制度を有効と判断した。就業規則はあるが賃金規程も雇用契約書もなかった。外勤手当が残業代見合いであることは入社時や年2回の面談を通じて割増単価の計算式に関する図表を表示し説明していたとしたうえ、本人から質問はなかったことなどから理解、合意していたとした。
“図表”で本人理解 丁寧な説明を評価
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y社においてガス機器の修理や販売の営業に従事していたが、退職後、未払い残業代を請求して提訴した。
Y社には就業規則はあるが賃金規程や労働契約書はなく、基本給として、年齢給、職能給、外勤手当が支給され、その他、売上給、粗利給、資格手当、調整給、報奨金、繁忙手当、非課税通勤費が支給されていた。求人募集(転職支援サイト)においては、「月給額には36時間分のみなし残業手当が含まれています。残業時間がそれより少なくても減額することはありません」とされていた。
Y社は、固定残業代の制度を採用しているとして、採用面接時には、36時間の固定残業代について説明し、また、年2回の従業員に対する個別の給与の評価・改定の説明の際に、パソコンの図表を示して説明し、その説明資料においても、外回り営業マンおよび施工者に対し、36時間分の残業代相当の外勤手当を支給すると記載し、残業代単価の計算方法も明示していると主張したが、Xはこれを否定して争った。なお、非課税通勤費を残業代の計算基礎に含めることの要否(実態として通勤手当かどうか)、労働時間数についても争われた。
判決のポイント
1 外勤手当は、みなし残業手当か
ある手当が…
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