セヴァ福祉会事件(京都地判令4・5・11) 定期健康診断の病院選んで受診すると自腹に? 健診費用は会社負担が原則
2022.11.04
【判決日:2022.05.11】
定期健診の費用を自己負担した労働者が、会社に費用等を請求した。京都地裁は、原則として会社が負担すべきとした。会社が医療機関等を指定した証拠はないが、安衛法では労働者自ら医師を選択できるとし、定期健診で2万~3万円のコースを受診することは必要かつ合理的と認め、会社に不当利得の返還を命じた。その他、タイムカードの打刻時刻から労働時間を認定している。
金額も合理的範囲 返還する責任負う
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、被告Yの経営する保育園において、勤務したXが、
① 時間外・深夜割増賃金の差額
② 月額固定給の差額
③ Xが負担した定期健康診断の費用
④ 恒常的に月間80時間を超える長時間労働
を強いられたとして、労働契約上の安全配慮義務違反の損害賠償、
⑤ 労基法114条に基づく付加金等の支払い
を求めた事案である。本件の争点は、多岐にわたるが、労働時間の認定およびXが受診した定期健康診断の費用をYが負担する義務があるか否かに係る部分を紹介する。
判決のポイント
1 未払割増賃金の有無及びその額
Yは、タイムカードの打刻時刻は、単に出園・退園時刻を示すものにすぎず、労働時間を正確に証するものではない、特に、Xが最終退園者となる場合の打刻時刻は、YがXに指示した業務量に比して不自然であり、Xが意図的に打刻時刻を遅らせていた疑いがあるなどと主張する。しかしながら、…
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令和4年11月7日第3375号14面 掲載