日本郵便(地位確認等請求)事件(札幌高判令3・11・17) 出張旅費100回も不正受給、懲戒解雇は有効!? 同種事案の処分と均衡欠く
2022.11.10
【判決日:2021.11.17】
出張先への移動手段を偽り、100回にわたり旅費を不正受給したなどとして懲戒解雇した事案の控訴審。処分有効とした原審に対し、札幌高裁は、非違行為の態様は停職3カ月とされた者と同程度であり、処分の均衡を失するとして無効と判断。不正受給で10人が懲戒処分され旅費支給事務にずさんな面があり、本人に懲戒歴がなく始末書を出し全額返還したことも酌むべきとした。
ずさんな支給事務 始末書出し返還済
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被控訴人会社は、懲戒委員会の意見を聴取したうえ、平成30年3月、控訴人が懲戒事由に該当するとして、控訴人を懲戒解雇した。被控訴人が指摘した懲戒該当行為は、平成27年6月~翌年12月までの間、宿泊料等を偽った旅費請求書等を作成し、100回にわたり会社に支出させ、旅費合計194万9014円を振り込ませ、52万円余を不正に受給したほか、クオカード代2万円余を不正に受給したことである。
控訴人は、懲戒事由が認められず、そうでないとしても客観的合理的理由を欠き、社会通念上の相当性を欠くから無効であるなどと主張して、雇用契約上の地位確認等を求めた。
一審(札幌地判令2・1・23)は、懲戒解雇は有効であるとして請求を棄却し、原告が控訴した。本控訴審判決に対して、上告および上告受理申立てがされたが、棄却ないし不受理とされた(最一小決令4・6・23)。
判決のポイント
控訴人は、…
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令和4年11月14日第3376号14面 掲載