システムメンテナンス事件(札幌高判令4・2・25) 夜間当番の呼出待機、行動自由で残業代なし? 事務所滞留中は指揮命令下

2022.12.08 【判決日:2022.02.25】
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 駐車場のメンテナンスで夜間当番の待機時間が、労働時間に当たるか争った事案の控訴審。事務所にいない時間の行動は基本的に制約がなかった。指揮命令下にないとした一審に対して札幌高裁は、終業後に事務所内にいた時間に関して、速やかに現場へ向かえるよう待機していることを会社は容認し、指揮命令下と判断。事務所にいない時間は、入電の確率も考慮して労働時間でないとした。

会社知りつつ容認 速やかに現場直行

筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 XはYに雇用されて、機械式駐車場のメンテナンス業務に従事している者である。顧客から不具合等の連絡があった場合には、日中に限らず夜間も現場で緊急対応があるため、Yは、従業員に対し、平日夜間および休日の顧客対応の当番として、「P待機」および「P待機」の従業員が対応できない場合のサブの「A待機」を割り当てている。

 夜間等の顧客からの不具合等の電話は、会社の留守電から当番従業員に転送され、当番従業員は、携帯電話を携行して社用車で帰宅し、必要な場合は現場対応するよう求められ、遠方に出かけたり、飲酒することは禁止されている。もっとも、Xは、終業時間後もしばらく(時間数については争いあり)事務所内に留まって待機していた。

 休日の日中については、実作業の有無にかかわらず、休憩時間を除く全ての時間分の割増賃金が支払われていたが、平日・休日の夜間については、実作業時間等の割増賃金のみが支払われ、不活動待機時間に対する割増賃金は支払われていなかった。

 Xは、夜間の待機時間も労働時間に該当するとして、Yに対し時間外手当等の未払割増賃金および遅延損害金の支払を請求するとともに、労基法114条の付加金の支払を求めて提訴した。

 一審(札幌地判令2・11・9)は、Xが、一定の場所における待機を義務付けられておらず、行動の自由も広く保障されていることから、Yの指揮命令下には置かれていなかったとして、本件不活動待機時間の労働時間性を否定し、Xはこれを不服として控訴した。…

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令和4年12月12日第3380号14面 掲載
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