兵庫県警察事件(神戸地判令4・6・22)機動隊員への叱責はパワハラと損害賠償求める 個人に殊更厳しい指導違法
うつ病を発症して自殺した機動隊員の遺族が、先輩らにパワハラを受けたとして損害賠償を求めた。神戸地裁は、単純ミスを繰り返した隊員への叱責は、他者への指導と比べ殊更厳しかったと認定。強い叱責も許容されるが、大声で怒鳴るなど態様を暴言と評価した。指導方法の変更を検討すべきとしている。慰謝料支払いを命じたが、発病等との相当因果関係は否定した。
暴言といえ不適切 自殺の関連性否定
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲(平成2年11月生)は、兵庫県公安委員会の管理課の警察本部の機動隊に平成21年4月1日に警察官として採用されて勤務していた者であるが、平成27年10月6日、寮の自宅で自殺を図り、同月15日に低酸素脳症により死亡した。甲の両親は機動隊内の上司および先輩から指導の域を超えた嫌がらせ等のパワーハラスメントや違法な命令・体罰等を受けたことによって、うつ病を発症して自殺したと主張して、県に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という)1条1項または安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求として、甲の死亡による逸失利益・甲の慰謝料の損害金合計額につき、訴えを提起した。
甲の職場の上司や先輩の叱責や指示等が業務上の指導の範囲を超えるもので違法であったといえるかは、当該行為とうつ病の発症および自殺との相当因果関係の有無にある。本判決は、およそ以下のように判示して、うつ病の発症および自殺との相当因果関係を否定した。
判決のポイント
甲の上司らによる
① ミス一覧表の作成・提出を命じた行為、
② ナンバープレートに関する叱責、
③ カンニングに関する叱責、
④ 簿冊の記載ミス等に関する叱責
の各行為は、…
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