ヤマサン食品工業事件(富山地判令4・7・20) 60歳から嘱託と合意したが懲戒理由に取り消す 定年後再雇用の期待認める

2023.02.16 【判決日:2022.07.20】
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 定年後の労働条件を合意した後に懲戒処分を受けた従業員が、再雇用を拒否されたため地位確認を求めた。富山地裁は、高年法の指針に基づき継続雇用しないことができる解雇事由に該当せず、再雇用の期待は合理的と判断。懲戒事由を理由とした不法行為の成立は否定した。合意の内容で契約が成立し、年金の支給が開始される64歳までの更新期待は極めて高いとしている。

解雇事由当たらず 年金支給まで更新

筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 Y社の社員Xは、令和2年7月20日に60歳定年に達することから、同年2月20日、Yと定年退職の翌日を始期とする嘱託雇用契約の条件を合意したうえで、合意締結時から定年に達する日までの間に、「a就業規則の定めに抵触した場合、b健康上の問題により本件合意の内容では就業が困難であると認められる場合、cその他本件合意を見直すべき特段の事情が生じた場合」のいずれかの事情が生じた場合には、本件合意を破棄し、再雇用の可否および再雇用する場合には労働条件を再検討する旨の書面に署名押印した(ただし、aにつき合意したかは争いがある)。

 Yは、Xがコロナ対策として「自宅待機」を命じられていたのに、2日にわたり私用外出し、関連会社が生成し、従業員へ無償提供していた除菌水の大量持ち帰りは遠慮するようにとされていたにもかかわらず、合計80リットルを持ち帰ったことについて業務命令違反があったとしてXを譴責処分とし、懲戒処分を理由に、始期付き嘱託雇用契約を解除した。Xは当該解除は、客観的に合理的な理由および相当性に欠け、権利の濫用に当たり無効であると主張して、地位確認、嘱託雇用契約に基づく判決確定までの賃金および不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料200万円等)の支払いを求めて提訴した。

判決のポイント

1 本件合意解除の効力

 「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」の内容をも踏まえると、…

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令和5年2月20日第3389号14面 掲載
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