よみうり事件(平4・9・9名古屋地判) 営業譲渡によって雇用関係は包括的に移転するか
1993.01.18
【判決日:1992.09.09】
全部か一部かを明確に
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、昭和52年5月1日、A社に入社した。
A社は、昭和49年7月31日以降昭和63年1月31日に被告会社に営業の全部譲渡をするまで、日刊新聞等の発行を目的としていた株式会社であり、東海三県下を対象に、日刊紙「中部讀賣新聞」及び「報知スポーツ」を発行していた。
本件営業譲渡に際して、A社の従業員は、昭和63年1月31日付でA社に退職届を提出し、退職金の支払いを受け、同年2月1日付で被告会社から採用辞令の交付を受けた。
A社の従前の営業は、被告会社によって、同一場所、同一施設において、中部讀賣新聞本社という類似の名称で中断なく継続されている。
被告会社に入社したA社の労働者は、被告会社において従前とほぼ同一の労働条件で勤務を継続し、原告においてもまた同様であり、原告は、被告会社から「入社、報道部報道課勤務とする」との採用の辞令を受領した。
本件において争われた配転命令はA社が発令したものであり、営業譲渡によって従前の労働関係が承継されるか否かが問題となった。
判決のポイント
「営業譲渡においては、有機的組織体である営業そのものの同一性を維持しつつ経営主体が交替するのであるから…
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平成5年1月18日第1945号10面 掲載