朝日放送事件(平4・9・16東京高判) 下請労働者加入組合からの団交申込みを拒否できるか ★
1993.02.01
【判決日:1992.09.16】
決定権、支配力等で判断
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
朝日放送はテレビ番組制作の照明・音響等の業務をA・B2社に請負わせ、A社は更に照明業務をC社に請負わせ、右下請3社の労働者は、番組制作現場において、業務の進行に応じて朝日放送のディレクターの指示の下で作業をしていた。このような関係において、下請労働者の加入組合が朝日放送に団交を申し入れたところ、朝日放送は使用者ではないとの理由で団交を拒否したため、不当労働行為か否かが争われたものである。
労組法7条2号は正当な理由なく「使用者が雇用する労働者の代表者」との団体交渉を拒むと不当労働行為になると定めているが、本件では受入企業である朝日放送が下請労働者との関係で右の「使用者」に該当するか否かが正面から争点とされた注目すべき事案である。
中労委及び一審の東京地裁は、朝日放送が下請労働者の作業を支配決定している点に着目し「就労に係る諸条件」に関する団交事項に限り、朝日放送は労組法7条2号の「使用者」に該当すると判断したが、二審の本判決はこれを覆し、そもそも朝日放送は「使用者」に該当せず、従って不当労働行為の問題が生ずる余地はないと判断した。
判決のポイント
下請3社はそれぞれ事業主体としての独立性を備え、独自の就業規則をもつと共に…
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平成5年1月11日第1947号10面 掲載