総友会事件(平4・5・28東京高判) 懲戒理由に該当する事実を告知しなかった懲戒解雇の扱い

1993.02.08 【判決日:1992.05.28】
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処分自体が正当なら有効

筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)

事案の概要

 社団法人総友会(Y)は、わが国における総務部門のあり方とその向上発展のために寄与し、地域社会の向上発展に貢献することを目的とした社団法人であり、総務、人事、労務に関する研究連携機関として、研究会等の会合の開催、各種調査活動、資料の出版・編集、資料・規定類の収集依頼と相談業務を行っている。

 Xは、昭和36年7月6日、Yの前身である日本内部監査協会に雇用され、昭和40年10月、Yが右協会から分離独立した際、Yに移籍し、業務部長を経て、事務局次長の地位にあった。Yの就業規則第50条では懲戒理由として次のとおり規定している。

 「1 故意または過失により業務上重大な失態があったとき、2 会の業務を進んで阻害するような意図のあることが事実によって明らかになったとき、3 正当な理由がなく、就業を拒否したとき、4 正当な理由がなく、しばしば遅刻、早引または私用外出したとき、5 無届欠勤が14日以上になったとき、または出勤が著しく正常でないとき、6 著しく自分の職責を怠り、確実に勤務しないとき、7 職務上の指示に従わないとき、8 著しく自分の権限を超えて独断の行為があり、失態を招いたとき、9 採用のとき虚偽の陳述を行ない、または虚偽の履歴書、戸籍謄本、身元証明書などを使用したとき、10 許可なく他会社その他に勤務したとき、11 会の秩序をみだすおそれのある流言を行なったとき、12 みだりに会の職制を中傷または誹謗し、あるいは職制に対し反抗したとき、13 懲戒に処せられたにもかかわらず始末書を提出しないなど、懲戒に従う意思が全く認められないとき、14 刑罰に触れる行為をしたとき」、そして、同規則53条では、「懲戒の決定は、専務理事がこれを行なうものとする。ただし、局員が不当な処分を受けたと信ずるときは、専務理事に対して適当な措置が行なわれることを要求することができる。この場合、専務理事は、事情を調査のうえ再審議し、かつ、その結果につき理由を説明しなければならない」と定めている。

 Yは、Xが経理上の不正、業務に対する非協力的など勤務態度が不良であること、人事に関して非難し、誹謗したことなどを理由とする譴責処分後も、一向に勤務態度があらたまらなかったため、数回、退職を勧告したが、これに応ぜず、一層勤務態度がひどくなった。それで、Yの専務理事は、昭和50年10月7日、Xに対し、就業規則50条第1項4号により懲戒解雇に付する旨の意思表示をした(以下、本件解雇処分、という)。Xは、本件解雇処分は無効であるとして、訴を提起した。

 第一審東京地裁(平成2年3月28日判決)は、Yはその事務局が5名程度の小人数で組織されているものであり、Xは、事務局次長という地位にあったところ、非協力的なふしだらな勤務状況などにより、他の職員の信用を失っていたこと、Xは、過去にも譴責処分を受けていながら、これによって反省するというよりもYに対する反感を募らせ、Yの秩序に対する挑戦を明らかにしたなどの諸事情を総合すればXを本件解雇処分に付したことは、客観的合理性を欠くものではなく、社会通念上相当として是認することができる旨判示して、Xの請求を棄却した。本件は右の控訴審である。

判決のポイント

 本判決のポイントは…

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平成5年2月8日第1948号10面 掲載
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