改進社事件(平4・9・24東京地判) 不法就労外国人の労災事故の民事賠償金額の算定は… ★
1993.03.08
【判決日:1992.09.24】
本国での収入を“基準”に
筆者:弁護士 安西 愈(中央大学講師)
事案の概要
本件は、いわゆる不法就労の外国人労働者が、製本作業中に右手人さし指末節部分を切断したことに関し、製本会社(有限会社)およびその代表取締役個人に対し、損害(休業損害+逸失利益+慰謝料+弁護士費用)賠償の支払いを請求したものであるが、判決はこれを基本的には認容した。
本件の原告は、パキスタン回教共和国の国籍を有する者であるが、「入管法」の「短期滞在」にあたる観光目的で入国しながら、来日の翌日から製本業者である被告会社に雇用され、本件労災事故発生までの間、製本等の仕事に従事していた。
本件労災事故は採用後約4カ月経過した平成2年3月30日、製本機を用いてパンフレットの中綴じ作業を行っていたところ、右手人さし指を製本機に挟まれその末節部分を切断するという事故に被災し、労災保険を申請し、その後遺障害として労災保険により第11級7号該当の認定を受けた。
そして、原告は、本件事故後、労災保険から休業補償給付13万2972円及び障害補償給付164万4725円の各給付を受けたほか、被告会社から17万8133円の支払いを受けている。
右事故について、民事上の損害賠償責任を求めたのが本件である。
判決のポイント
本件は、外国人と日本法人及び日本人との間の法的な紛争であるから、安全配慮義務違反の債務不履行については法例7条により…
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平成5年3月8日第1952号10面 掲載