学校法人早稲田大学事件(東京地判令4・5・12) 教員公募試験に不合格、公正でないと賠償請求 選考過程の開示義務負わず
公募された専任教員の選考過程の情報開示を求めたが、拒否された非常勤講師が損害賠償を求めた。書類選考で不合格だった。東京地裁は、職安法は根拠になり得ないなどとして請求を退けた。仮に開示が必要な個人情報としても、開示すれば採用の自由を損なうおそれがあるなどとしている。労働組合の団交要求も、義務的団交事項に当たらず応諾義務を否定した。
公表すれば支障も 団交応諾義務なし
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
原告Aは、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科が平成28年1月に行った専任教員の公募(本件公募)に応募したが、書類審査の段階で不合格となった者である。
(1)原告Aが、被告には、本件公募の応募者に対して本件公募の採用選考過程や応募者がどのように評価されたかについて情報を開示し説明をする義務があるにもかかわらず、被告は、開示を拒否し続け、原告Aの透明・公正な採用選考に対する期待権および社会的名誉を侵害したと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等を請求した。また、(2)原告Aの加入する原告組合が、被告に対し、本件公募の採用選考過程や原告Aの評価等に関する情報開示および説明を団体交渉事項とする団体交渉を申し入れたところ、被告が正当な理由なくこれを拒否したと主張して、団体交渉事項について団体交渉を求める地位にあることの確認を求めるとともに、被告の団体交渉拒否により団体交渉権を侵害され、労働組合としての社会的評価を毀損されたと主張して、不法行為に基づき、無形の財産的損害等を求めた事案である。
判決のポイント
1 原告Aは、本件公募に応募したが、…
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