ワールド証券事件(平4・3・23東京地判) 従業員の不法行為による損害賠償責任と身元保証人の責任
形式的保証人は責任も制限
筆者:弁護士 渡辺 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社(ワールド証券株式会社)の歩合外務員(歩合報酬によって、証券会社に代わって有価証券の売買その他の取り引きを行う外務員)であったAが、会社の業務命令(大成物産からの注文は、翌10月3日に本件内金1億5000万円が入金されるまでは新たに受けてはならない)に違反して客からの株式買い付け注文を受けてこれを執行したため、右客からの支払いを受けられなかった買い付け代金及び手数料に相当する損害を受けたとして、Aに対しては歩合外務員契約に基づき損害の賠償を求めるとともに、Aの身元保証人であった甲及び乙に対しては身元保証契約(身元保証書には「万一、過失または懈怠によって貴社に損害を及ぼし、その義務を尽くすことができなかった場合には、私どもが連帯して履行の責に任じ貴社のお指図に従って弁償いたします」との不動文言がある)に基づき損害の賠償を求めた。本判決は、甲及び乙に対し身元保証人としての責任を認めたが、その責任賠償額をAの責任賠償額の4割に減額したものである。なお、身元保証法第5条は、被用者の監督について使用者に過失があったかどうか、身元保証人が保証するにいたったいきさつ、その他一切の事情を調べたうえで、身元保証人の責任額を決める旨定めている。
判決のポイント
身元保証人たる甲及び乙の責任に関する争点は、①会社とAとの歩合外務員契約は昭和59年10月1日から1年の期間の定めであり、…
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