東日本旅客鉄道事件(平5・2・10東京高判) 出向先工場前におけるビラ配布等情宣活動の正当性は
宣伝カー使用は非違行為に
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
Y会社は、発足当初から、膨大な余剰人員を抱えていたため、これらの人員の活用が重要な問題であった。そこで、関連会社の育成や民間会社での社外教育などの観点から出向を積極的に推進した。しかし、Z組合は、右出向について、出向者の事前同意のない実施に反対し、Z組合員らの第一次から第三次の出向の事前通知についても、Y会社に対し撤回を強く求めた。さらに、右二次ないし三次出向について、Z組合は群馬県地方労働委員会に不当労働行為救済申し立ておよび審査の実効の措置勧告の申し立てを行い、地労委は、出向命令の実施については審査中であり、十分留意の上慎重を期せられたい旨の勧告を行った。
一方Z組合は、当該出向先のF重工伊勢崎製作所門前において、情報宣伝活動を行うこととした。具体的には、組合員29名が正門前に午前7時過ぎに集合し、各自ハチマキ、腕章を着用し、出勤してくるF重工社員に対してY会社の出向施策などを批判したビラを配布する一方、組合員3名は、7時15分から同45分頃まで、宣伝カーのスピーカーを使い、かなりの音量でY会社の出向施策などの不当を訴える趣旨の演説を行った。その後、到着した出向者に対し拍手をし、シュプレヒコールを5、6回繰り返した後、午前8時頃解散した。
Y会社は、本件行動に参加したZ組合員4名に対して、Y会社の重要な施策である出向制度の遂行に多大な支障を来たすおそれがあるものであると同時に、Y会社の信用を著しく失墜せしめたとして、出勤停止5日の懲戒処分をした。初審の群馬地労委は、本件処分は労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとして救済命令を発し、前橋地裁もこの命令を支持したため、Y会社が東京高裁に対し控訴に及んだ。
判決のポイント
①企業の経営は専ら企業主体(使用者)の危険と責任において遂行され、…
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