三井石炭鉱業事件(平4・11・25福岡地判) 希望退職募集後に、高齢者を対象とした整理解雇は有効か
福利厚生等の配慮もあり有効
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、石炭の採掘及び売買を業とする株式会社であり、石炭採掘の事業所として北海道に芦別鉱業所、九州に三池鉱業所を置いているが、三池鉱業所の昭和63年3月末現在の従業員数は約3600名であった。原告31名は、いずれも被告の三池鉱業所において一般職社員として雇用されたものであり、三池炭鉱労働組合(以下、組合という)の組合員である。
被告は昭和63年4月28日に組合に対し、石炭の需要減少と貯炭の増加により経営環境が悪化し、人員計画上余剰人員が生じることになったとして、三池鉱業所の一般職社員610名などの人員削減計画を提示した。右計画は人員削減のため、まず希望退職を募集し、これが右人数に満たない場合には昭和63年度末現在で満52歳以上の者を解雇するなどの内容であった。
被告と組合は団体交渉を持ったが、交渉は決裂し、被告は5月30日から6月14日までの間、希望退職を募集し、298名の一般職社員が希望退職に応募した。
その後、被告と組合は解雇を中心とした団体交渉を行い、被告は昭和63年12月31日までに満53歳以上に達する者を解雇対象とする整理解雇案を提示したが、組合の了解は得られなかった。
被告は、就業規則の解雇事由である「事業を休廃止又は縮小したとき」などを適用して、昭和63年6月29日付で原告らの一部を含む一般職社員216名を、同年12月31日付で残余の原告を含む一般職社員54名をそれぞれ解雇した。
原告らは、整理解雇の必要性及び解雇回避措置が不存在であること、被解雇者人選基準が不合理であること、組合と十分な協議義務が履行されていないことを理由に、本件整理解雇が権利の濫用で無効であると主張して本訴を提訴したが、裁判所は、本件整理解雇は就業規則所定の解雇事由に該当し、権利の濫用に当たらないとして、本件整理解雇の効力を認め原告らの請求を棄却した。
判決のポイント
1 就業規則の解雇事由である「事業を休廃止又は縮小したとき」などを適用して有効に整理解雇をするためには、…
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