竹中工務店ほか2社事件(大阪地判令4・3・30) 偽装請負の状態であり元請へ直接雇用を求める 二重派遣にみなし適用せず
工事の設計・施工図作成を請け負う会社の従業員が、実態は派遣に当たるとして委託先とその親会社に地位確認を求めた。大阪地裁は、親会社の指揮監督下にあり二重派遣の状態としつつ、労働契約申込みみなしの適用を否定。親会社らは派遣の役務の提供を受けたとはいえないとした。派遣に切り替えようとしたほか、違法な就労は2カ月に留まるなど損害賠償請求も退けた。
“違法是正”努めた 賠償請求も退ける
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y1社は、建築工事および土木工事に関する請負、設計および監理等を業とするゼネコンである。Y2社は、Y1社の100%子会社であり、建築工事の設計・施工に伴う図形情報処理業務の受託等を行う会社である。Y3社は、労働者派遣法(以下「派遣法」)に基づく労働者派遣事業、土木工事・建築工事等の設計・施工等ならびに請負を業とする会社である。
Xは、令和元年6月10日、Y3社より採用内定の通知を受けた。7月12日、Y3社の担当者およびXは、Y2社の担当者と打合せを行い、Y2社の担当より、E社工事現場で施工図作成業務を受ける意向の有無を尋ねられ、受諾した。
7月22日、Y3社とXとの間に労働契約が成立した。
Xは、同月25日~同年8月1日まで、Y2社支店において、同月2日から、E社工事作業所(以下「本件作業所」)において、施工図作成等の業務に従事した。Xは、本件作業所での業務を開始して以降、Y1社の担当者から業務指示が行われていることについて偽装請負を疑い、同月13日、労働局に申告を行った。9月30日、Y3社の社長らはXと面談し(以下「本件面談」)、派遣に切り替えることを申し出て、それでも本件作業所で働けないのであれば、しばらくはY3社で業務を手伝ってもらえないかと尋ねたところXが断ったため、そうであれば他を探してもらうほかないと述べた。
10月5日、Y3社はXに対し、9月30日付け解雇通知書を送付した。Xは、同年11月20日、Y1社およびY2社に対して、本件作業所におけるXの業務は、Y1社による偽装請負であり、派遣法40条の6により、Y1社およびY2社は、Xに労働契約の申込みをしたものとみなされるとし、Y1社に対しては主位的に、Y2社に対しては予備的に、この申込みを承諾する旨通知した。
Xは、Y1社に対して、Y1社との間で、黙示の労働契約または派遣法40条の6に基づき労働契約が成立したとして地位確認等を請求し、Y2社に対しても、同条に基づく地位確認等を請求し、Y3社に対しては、解雇が労働契約法16条および派遣法49条の3第2項に違反して無効として地位確認等を求め、Y1~3社らに対し共同不法行為に基づく損害賠償を求めて提訴した。
判決のポイント
Y3社は、Xと期限の定めのない労働契約を締結しており、…
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