御国ハイヤー事件(平4・10・2最判) 争議行為の手続・態様からみた正当性の限界
実力での操業阻止はダメ
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
タクシー会社の組合員が、春闘回答を不満としてストライキに入った。その際、組合員が乗務することになっていたタクシー6台を会社側において稼働するのを阻止するためタクシーの傍らに座り込んだり寝転んだりして車庫を占拠した。その結果、6台のタクシーが2日間にわたり稼働できなかった。
そこで、会社が右ストライキを指導した組合幹部らに対し、損害賠償を求めたものである。一審判決(高知地判昭61・5・6)は、使用者は争議中でも操業継続の自由を有しており、これによりストライキによる損害の軽減を図ることができるところ、本件タクシーの稼働阻止は、正当な争議行為の範囲を超えており、実力的手段により営業を妨害するものとして違法であるとし、会社の請求を認容した。これに対し、二審判決(高松高判平元・2・27)は、争議行為は同盟罷業とこれを実質的に維持するために必要な付随的行為を含み、争議行為が正当か否かは、その主体、目的、手続、手段・態様等諸般の事情を考慮して法秩序全体の見地からこれを判断すべきであるとした上で、タクシー業においてはストライキ中の労働者がその実効性を確保するためピケあるいは座り込みをもって使用者による車両の搬出を阻止しようとすることは必要・不可欠とも言うべき戦術であり、これを厳しく制限することは、このような業種の労働者の争議権を奪うに等しく相当ではなく、本件搬出阻止は、これをもって使用者の正常な操業の自由が妨げられたと評価するのは相当でなく、また対応の際に暴力行為に及んだものではないから、全体としてみれば正当な争議行為であるとして会社の請求を棄却した。
本件最高裁は、右高裁判断を覆し、本件ストライキは違法であるとした。
判決のポイント
ストライキは、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は…
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