商大八戸ノ里ドライビングスクール事件(平4・12・25大阪地決) 協定書に使用者の記名押印がない場合の効力は?
一定の効力認めるケースも
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
組合は、会社に対し、平成4年11月6日、平成4年年末一時金につき、基準内賃金と家族手当を加えた額の4カ月分と一律10万円の要求をした。これに対し、会社は、協定書をもって回答した。
組合は、会社に対し、協定書案のうち、「Ⅳ特別評価」のほか、冒頭部分、「支給対象者」「支給配分方法」「各人別所定労働時間数の決定」の各項の一部等について、「同意致し兼ねます」などと記載された妥結通知書を交付した。その後、会社は、組合に対し、妥結通知書の撤回を求めるとともに、協定書案に「Ⅶ支払日」「Ⅷ上記のことを、すべて承諾し調印します」という2項を追加した協定書を交付し、それに署名押印すれば、協定書に基づき、一時金を支払う旨の意思表示をした。
そこで、組合は、協定書の内容を、すべて受諾することにして署名押印し、会社に対し、早期の一時金の支払いを求めて協定書を交付しようとしたところ、会社は、妥結通知書を撤回する旨の書面がないことを理由に協定書の受け取りを拒否し、協定書に記名押印しなかった。
そこで、組合員らが協定書どおりの一時金の支払いを求めて仮処分命令を申立てた。
決定のポイント
「債務者(会社)が組合に署名押印を求めて本件協定書を交付し、これに対して組合が本件協定書の内容を全て受諾して署名押印をした以上、本件協定書に基づき一時金を支払う旨の合意(以下『本件合意』という)が成立したというべきである。なお債務者は、…
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