学校法人茶屋四郎次郎記念学園事件(東京地判令4・4・7) 雇止め訴訟で和解、授業外されパワハラと申告 調査対応遅れ慰謝料命じる
雇止めされたが和解した教授が、和解条項が守られず損害賠償を求めた。和解した週4コマの授業担当から外されたこと、パワハラの申告対応も債務不履行と訴えた。東京地裁は、安全配慮義務上パワハラの審議結果を遅滞なく告知する義務を負うと判断。審議不能の結論が出てから回答まで8カ月余を要する合理的な理由はないとした。授業不担当も債務不履行に当たる。
告知まで8カ月間安配義務に反する
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告はD大学(本件大学)等を設置および運営する学校法人、原告は有期労働契約を締結し本件大学のA学部教授として就労してきた。
原告は、被告に対し、平成24年3月31日付雇止めおよび同年3月16日付懲戒解雇の効力を争う労働契約上の地位確認を求める訴訟を提起し、原告の地位確認請求が認容されたため(東京地判平26・2・18)、平成27年2月3日から本件大学に復職した。
同年8月19日、原告は被告に対し1コマ90分の授業を週4コマ行う雇用契約上の権利を有することの確認を求める訴訟を提起し、平成28年3月29日、平成28年度の雇用契約について、出勤日週2日、授業時間週4コマ(1コマ90分授業)を下らないとすることなどを内容とする訴訟上の和解が成立し、同年4月20日、本件和解内容を踏まえた労働契約が締結された。
その後、原告が自身のホームページにおいて訴訟の経緯や本件和解が成立したことなどを掲載したこともあり、被告は原告に対し平成28年度秋学期以降の授業を担当させなかった(以下「本件授業不担当」)。原告は、平成28年11月24日、被告内のハラスメント防止・対策専門部会(以下「本件部会」)に対し、本件授業不担当がハラスメントに当たるなどと申告する(以下「本件申告事項」)メールを送信し、所属組合を通じて、被告に対し、本件申告事項に対する審議結果を連絡するよう求め、被告も、詳細は追って連絡する旨回答していた。平成29年7月6日、本件部会は、本件申告事項について、法的訴訟にまでなっている問題であることなどを理由に審議不能とする結論に至ったが、被告が原告(の所属労組)に対し審議不能という結論になったことを通知したのは、平成30年3月16日であった。
原告は被告に対し本件授業不担当や本件申告事項に対する対応において債務不履行があったとして損害賠償請求訴訟を提起した。…
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