大星ビル管理事件(平5・6・17東京地判) 労基署長の許可を受けない 夜間仮眠時間の取り扱いは ★
割増賃金の支払義務がある
筆者:弁護士 安西 愈(中央大学講師)
事案の概要
本件は、ビル管理の業務に従事する労働者が、夜間、連続した8時間ないし7時間の仮眠をビル内の仮眠室でとりながら、ビル管理上の異常事態に備えるという仮眠時間が労働時間か否か問題となったものである。
本件原告らは、毎月数回、23時間または24時間連続の勤務(以下「24時間勤務」という)に従事する。そして、その間、休憩時間が合計2時間、仮眠時間が連続して8時間(7時間のビルもある)与えられる(以下「本件仮眠時間」という)。
原告らは、本件仮眠時間中、ビルの仮眠室に待機し、警報が鳴る等した場合には直ちに所定の作業を行うこととされているが、そのような事態が生じない限り、睡眠をとってもよいこととなっている。
この24時間勤務に対しては「泊まり勤務手当」として1回につき2300円が支給され、また、本件仮眠時間前に開始された業務が同時間中まで継続したり、同時間中に突発的に業務が発生したりすることがあったとき、現実に業務に従事した時間に対し、時間外勤務手当及び時間帯に応じて深夜就業手当が支給されている。このような仮眠時間は、本来はいわゆる宿直時間などであるが、被告会社では宿直の許可はとっていなかった。
判決のポイント
労基法にいう労働時間とは、労働者が使用者の拘束下にある時間(いわゆる拘束時間)のうち休憩時間を除いた(同法32条参照)時間、すなわち実労働時間をいう。そして、…
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