沼津交通事件(平5・6・25最二小判) 年次有給休暇取得者への皆勤手当不支給は合法か ★
取得抑止力の強弱等で判断
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
被上告会社では、昭和40年ころから乗務員の出勤率を高めるため、ほぼ交番表(月ごとの勤務予定表)どおり出勤した者に対しては、報奨として皆勤手当を支給することとしていた。
そして、会社と従業員労組との間の労働協約で、昭和63年度は1カ月3100円、平成元年度は1カ月4100円の皆勤手当を支給することとするが、年次有給休暇を含む欠勤の場合は、欠勤が1日のときは昭和63年度は1カ月1550円、平成元年度は1カ月2050円を右手当から控除し、欠勤が2日以上のときは右手当を支給しないことと定めた。
上告人は、昭和50年7月に会社に入社し、昭和63年5月、8月、平成元年2月、4月、10月の現実の給与支給月額は、22万余ないし25万円余であり、右皆勤手当の額の右現実の給与支給月額に対する割合は、最大でも1.85%にすぎなかった。
上告人は、昭和62年8月から平成3年2月までの43カ月間に42日の年次有給休暇を取得し、それ以外の年次有給休暇9日分については上告人の意思に基づきその不行使につき会社がいわゆる年次有給休暇の買い取りをした。
上告人は、年次有給休暇を取得した場合に皆勤手当を支給しない措置は公序に反する等として、未払賃金請求を求めたが、東京高裁がこの請求を棄却したため、上告に及んだものである。
判決のポイント
1、労働基準法第134条(使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない)は、それ自体としては、使用者の努力義務を定めたものであって、労働者の年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を有するものとは解されない。…
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