協立倉庫事件(平4・12・18最二小判) 本人の同意なしに株主総会で取締役の報酬を変更できるか ★

1993.11.01 【判決日:1992.12.18】
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同意なければ不可が原則

筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)

事案の概要

 甲(原告・控訴人・上告人)は、昭和45年12月、いわゆる同族会社で倉庫業を営む株式会社(被告・被控訴人・被上告人。以下、会社という)の専務取締役に就任し、以来、再任されてきたが、会社の創業者Aの死後、その長男で代表取締役に就任した乙との対立関係が表面化した。その結果、昭和58年10月15日開催の取締役会において、甲の同意を得ることなく、甲を常勤の取締役から非常勤の取締役に変更することが決議され、その後、乙は甲の出社を阻止して右決議内容を実行に移した。

 会社の定款には、取締役の報酬は株主総会の決議をもって定める旨の規定があり、株主総会の決議によって、取締役報酬総額の上限が定められ、ついで、取締役会において各取締役に期間を定めずに毎月定額の報酬を支払う旨の決議がなされ、その決議に従って甲に対し毎月末日限り定額の報酬が支払われていた。

 しかし、翌年1月13日開催の取締役会において、甲の職務内容を変更し、同意を得ることなく、従前甲に支給していた月額50万円の取締役報酬を同年1月1日以降は支給しないことが決議された。また、同年7月13日の定時株主総会では、甲が常勤取締役から非常勤取締役に変更されたことを前提として、甲の同意を得ることなく、甲の報酬につきこれを無報酬とすることが決議された。その後、甲は、昭和60年6月14日開催の定時株主総会において再任されず、取締役の任期を終了した。

 そこで、甲は会社に対し、取締役の報酬は任期終了前は当該取締役の同意なくしては、これを減額ないし無報酬にすることはできないと主張して、昭和59年1月1日から昭和60年6月14日までの取締役報酬及び遅延損害金等の支払いを求めて本訴を提起した。

 第一審は、甲の主張を一部認め、営業年度の途中で無報酬とすることは特段の事情のない限り許されないとして、会社に対し、昭和59年3月分までの報酬の支払いを命じた。また、第二審(大阪高判平成2年5月30日判時1373号133頁)は、株主総会に取締役報酬金額を定める権限があるから、任期途中の取締役の職務内容に著しい変更があり、かつ、それを前提として株主総会が当該取締役の同意を得ることなく一方的にその報酬を将来に向かって減額ないし無報酬とすることができるとして、当該株主総会決議がなされた昭和59年7月13日までの報酬の支払請求のみを容認した。甲上告。本件は、右の上告審判決である。

 本判決は、次のように判示して、原判決中の甲の敗訴部分を破棄し、第一審判決を取り消して、甲の請求を全部認容した。

判決のポイント

 本件は、取締役として毎月末に定額の報酬を支給されていた甲が、専務取締役から非常勤取締役への職務変更に伴い、…

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平成5年11月1日第1983号10面 掲載
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