スミヨシ事件(大阪地判令4・4・12) 勤務不良の改善困難、障害者を採用半年で解雇 協調性欠くと評価できない
障害等級1級の障害者を採用した鉄道車両の設計工事会社が、約半年後に能力不足や協調性がなく改善の見込みもないなどとして普通解雇した事案。大阪地裁は、解雇通知書の解雇理由はいずれも該当せず地位確認請求を認めた。派遣社員との関係が悪化した原因は双方にあり、言動を複数回注意指導していたが解雇の可能性を指摘して改善を求めてもいなかった。
一方的な責任否定 処分示唆し指導を
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Yの従業員であったXが、Yから解雇されたことにつき、当該解雇は解雇権の濫用に当たり無効であるとして、Yに対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、未払賃金等の支払いを求めた事案である。
Yは、鉄道車両および船舶の製造、補修並びに設計等を目的とする株式会社である。
Xは、平成9年頃に頭部外傷後遺症であるてんかんを発症し、以後、3カ月に1回程度通院していて、障害等級1級(日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの)の認定を受け、また、Xは、以前に遭った交通事故での受傷により、右の骨盤に8本のボルトを入れており、足を思うように動かしにくい状態にあった。
Xは、平成30年10月3日、Yもブースを出していた障害者を対象とする就職説明会に参加した。Yは、同説明会に先立って求人票を作成しており、その求人条件特記事項欄には、「職務遂行の可否の参考とするため、可能な範囲で障害の状況や配慮事項を応募書類に簡潔に記載してください」と記載されていた。Xは、同説明会においてYの説明を聞き、電車が好きだったことなどから、事前に作成していた職務経歴書を提出し、Yの求人に応募した。同職務経歴書には、Xが平成9年にてんかんを発病したこと、その後3カ月に1回程度通院していて安定していること、骨盤にボルトが入っており、重すぎる荷物を長い間持つなどは少し難しい面があること、などが記載されていた。
その後、Xは、Yでの面接を受けたうえで、11月1日、Yとの間で、期間の定めのない雇用契約を締結し、本件事業所での勤務を開始した。Xは、遅くともXが本件事業所での勤務を始めるまでに、Yに対し、夜にてんかんの発作が出たことはあるが、昼間はほとんど出ないこと、骨盤にボルトが入っているため、10キログラム以上の物を持ち続けるのは難しい面があることを伝えていた。
Yは、令和元年6月20日、Xに対し、6月30日限りで解雇する旨の意思表示をした。解雇理由は、①協調性がなく、注意および指導しても改善の見込みがないと認められるとき、②職務の遂行に必要な能力を欠き、かつ、他の職務に転換させることができないとき、③勤務意欲が低く、これに伴い、勤務成績、勤務態度その他の業務能率全般が不良で業務に適さないと認められるときというものであった。
本判決は、本件解雇を無効と判断し、Xの請求を一部認容した。Yが解雇理由とした上記①~③について、Xは、いずれにも該当しないとして解雇を無効と判断したが、そのうち、協調性の欠如を理由とした部分の判示を紹介する。
判決のポイント
Yは、①Xが他の従業員を萎縮させる言動をしたこと、②XがI(派遣社員)を見下す態度を取っていたこと、…
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